エッセイ2026.08.08
カウンターで話が弾んだ夜
倉科 忠宣
ソフトウェア開発・AI 活用・講師

前職の同僚と食事に行った。おいしいものを食べて、お酒を飲んで、気づけば生成 AI の話をしていた。便利になったね、でもこんな課題もあるね。そんな他愛のない往復が、なぜか一番楽しい。その後は馴染みのロック・バーへ移って、音楽を聴きながら話の続きをした。隣のカウンターにいたお客さんとも、いつのまにか音楽談義が始まっていた。仕事に復帰して三週間。ずいぶんいい気分転換になったと思う。
予定していなかった会話がいちばん残る
その日の会話で覚えているのは、準備していった話題ではなく、流れで生まれたやりとりのほうだった。隣の席の人と好きなバンドが重なった瞬間の、あの少しの高揚。あらかじめ組み立てられないものほど、後から効いてくる。
復帰三週間の身体は、休み方を忘れている
働き始めてしばらくは、休むことにも慣らしが要る。予定を空けるだけでは足りなくて、誰かと話して、まったく違う回路を使う時間が要る。気分転換とは、頭を空にすることではなく、別の場所に置いてくることなのだと思う。 前職の同僚も、隣の席の人も、明日また会えるとは限らない。だからこそ、あの夜の話が弾んだことだけを、そのまま持ち帰ればいい。
